事業用の蓄電池と税金|中小企業経営強化税制の即時償却と税額控除
公開:2026年9月20日

店舗や事業所で蓄電池を導入する場合、税金の扱いが個人宅とはまったく違います。 ここを知らないまま買ってしまうと、使えたはずの制度を逃すことがあります。
この記事でわかること
- 蓄電池は資産になる
- 即時償却と税額控除の違い
- 対象になる条件
- 経営力向上計画の認定は取得前
- 補助金との違い
- 個人事業主の場合
読むのにかかる時間:約4分 / 出典は記事の末尾に記載しています
読む前に、向き不向きだけ先に確かめることもできます。 電気代の削減効果は、もともとの電気代の大きさで決まります。合わない場合は、その旨をはっきり表示します。
この記事では、中小企業経営強化税制という制度を中心に、事業者が知っておくべき点をまとめます。 なお、具体的な適用の可否は個別の事情によりますので、最終的には顧問税理士か所轄の税務署にご確認ください。
蓄電池は「経費」ではなく「資産」になる
まず前提として、蓄電池のようなまとまった設備は、買った年に全額を経費にできません。 資産として計上し、決められた年数にわたって少しずつ経費にしていきます(減価償却)。
つまり、200万円の設備を買っても、その年の利益から引けるのは一部だけです。 手元のお金は出ていくのに、節税の効果はゆっくりとしか出ない。これが通常の扱いです。
この扱いを変えられるのが、これからご説明する制度です。
中小企業経営強化税制とは
中小企業が設備投資をしたときに、次のどちらかを選べる制度です。
① 即時償却(特別償却)
取得価額の全額を、その年の経費にできます。利益が出ている年に導入すれば、その年の課税所得を大きく圧縮できます。
② 税額控除
取得価額の10%(資本金3,000万円超の法人は7%)を、納める法人税から直接差し引けます。上限はその年の法人税額の20%です。
性質がまったく違います。
即時償却は「税金を先送りする」制度です。早く経費にするだけなので、長い目で見た税額の合計は変わりません。
税額控除は「税金そのものが減る」制度です。トータルの負担で見れば、こちらが有利になる場合があります。
利益の見通しと資金繰りで、どちらが合うかが変わります。
対象になるための条件
国税庁の説明によれば、主な要件は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 青色申告をしている中小企業者等(資本金1億円以下、または従業員1,000人以下など) |
| 対象設備 | 新品であること。機械および装置は1台160万円以上、工具・器具備品は30万円以上、建物附属設備は60万円以上、ソフトウェアは70万円以上 |
| 必要な手続き | 経営力向上計画の認定を受けていること |
| 適用期間 | 平成29年4月1日から令和9年3月31日までに取得し、事業に使い始めたもの |
金額の基準にご注意ください。機械装置なら160万円以上が必要です。 蓄電池がどの区分に当たるか(機械装置か、建物附属設備か)は、設置の形態によって判断が変わります。 ここは必ず税理士にご確認ください。
いちばん大事なのは「順番」
経営力向上計画の認定は、原則として設備を取得する前に受けます。
買ってから「あの制度を使いたい」と言っても、間に合わないことがあります。
補助金の「着工前申請」と同じ構造です。
導入を検討し始めた段階で、税理士に「この制度を使いたい」と伝えておいてください。
経営力向上計画は、事業内容や設備投資の内容を書いて、所管する省庁に申請し、認定を受けるものです。 申請から認定までには時間がかかりますので、設置工事の日程と合わせて逆算してください。 → 補助金申請の流れ|着工前に必要な手続き
補助金との違い
混同されやすいので整理します。
- 補助金はお金が入ってくるもの。予算に限りがあり、受付が終われば使えません
- 税制は納める税金が減る(または先送りになる)もの。要件を満たせば使えます
- 利益が出ていなければ、税制の恩恵は小さくなります(引くべき税金がないため)
2026年9月現在、国の家庭用蓄電池の補助金は受付が終了しています。 一方、この税制は令和9年3月31日までの制度です。事業者の方は、こちらを検討する価値があります。
個人事業主の場合
法人でなくても、青色申告をしている個人事業主も対象になり得ます。 この場合は法人税ではなく所得税から控除する形になります。
民泊や小さな店舗を個人で営まれている方も、「うちは法人じゃないから関係ない」と決めつけないでください。 まずは確定申告をお願いしている方にご相談ください。
見積もりを取るときに伝えること
- 事業用であること。自宅兼店舗の場合は、事業に使う割合も関係します
- 税制の適用を検討していること。設備の区分や型番の情報が必要になります
- 導入したい時期。計画の認定に必要な期間を逆算します
見積書に何が書かれているべきかは見積書の読み方にまとめています。
まとめ
- 事業用の蓄電池は資産。通常は少しずつしか経費にできない
- 中小企業経営強化税制を使えば、即時償却か税額控除(10%/7%)を選べる
- 条件は青色申告・新品・金額基準・経営力向上計画の認定
- 計画の認定は設備を取得する前に受けるのが原則
- 期限は令和9年3月31日まで
設備の金額だけを見て判断せず、税引き後にいくら残るかで考えてください。 同じ買い物でも、手順ひとつで負担が変わります。
出典:国税庁「No.5434 中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)」、 中小企業庁「中小企業経営強化税制」。2026年9月に内容を確認しています。 税制は改正されることがあります。適用にあたっては必ず顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。