美容室の電気代はなぜ高い?内訳と下げ方を実例で解説
公開:2026年9月12日
美容室を経営していると、毎月の電気代の請求を見て「なぜこんなに高いのか」と思う瞬間があります。 節電を心がけているつもりでも、数字はあまり動かない。 それは気のせいではなく、美容室という業態そのものが電気を使う構造になっているからです。
この記事では、美容室の電気代が何にどれだけ使われているのかを分解し、 そのうえで下げられる部分と、下げようがない部分を分けて説明します。 最後に、蓄電池という選択肢が向く店と向かない店についても、正直に書きます。
美容室の電気代は、4つのものでほぼ決まる
サロンで電気を使っているものを大きく分けると、次の4つになります。 店舗の造りや設備によって順位は入れ替わりますが、この4つで大半を占めるという点はどの店舗でも共通です。
① 給湯(シャンプー台)
電気温水器をお使いの場合、営業中はお湯をつくり続けます。冬は水道水の温度が下がるぶん、同じ量のお湯をつくるのに余計な電気を使います。「冬になると電気代が上がる」と感じる最大の理由がここです。
② 空調
客席・待合・シャンプーブース・スタッフルーム。面積が広く、ドアの開閉も多いため効率が落ちます。お客さまが快適でなければ商売になりませんから、設定温度を我慢するという選択肢は実質ありません。
③ ドライヤー・施術機器
業務用ドライヤーは1台あたり1,200W前後。同時に3台使えば、瞬間的には3,600Wになります。ほかにスチーマー、デジタルパーマ機、ヘッドスパ機器なども加わります。
④ 照明
カラーの色味を正確に見せるには、明るさと演色性の両方が要ります。1灯あたりの消費は小さくても、営業時間中ずっと点いているため積み上がります。
なぜ、他の業種より高くなるのか
同じ広さの事務所と比べると、美容室の電気代は明らかに高くなります。理由は3つあります。
1. 「お湯」を電気でつくっている
事務所に、営業中ずっとお湯をつくり続ける設備はありません。 美容室のシャンプー台は、来店客数のぶんだけお湯を使います。 電気温水器やエコキュートを使っている店舗では、ここが電気代の最大の項目になることも珍しくありません。
なお、給湯がガスの店舗では、この部分は電気代ではなくガス代として出ています。 「うちは電気代がそこまで高くない」という店舗は、給湯をガスでまかなっているケースが多いはずです。
2. 消費電力の大きい機器を、短時間に集中して使う
ドライヤーは1台1,200W前後。電子レンジ1台分に相当します。 これを施術のたびに使い、混雑する時間帯には複数台が同時に動きます。 1日の総使用量だけでなく、瞬間的な使用量(デマンド)も大きくなるのが美容室の特徴です。
3. 営業時間が長い
開店前の準備から閉店後の片付けまで含めれば、電気が動いている時間は営業時間より長くなります。 1日10時間から12時間、照明と空調が点いている。 単価×時間の「時間」の側が長いぶん、同じ設備でも金額は膨らみます。
今日からできる対策と、その限界
電気代を下げる方法として、まず検討されるのは次のような対策です。 効果はありますが、それぞれに限界もあります。
| 照明のLED化 | まだ蛍光灯やハロゲンが残っているなら、効果は確実です。ただしすでにLEDの店舗では、これ以上削るところがありません。 |
|---|---|
| 空調フィルターの清掃 | 目詰まりしたフィルターは効率を落とします。月1回程度の清掃は効きますが、これで電気代が大きく変わるわけではありません。 |
| 給湯温度の見直し | 必要以上に高く設定していれば、下げるぶんだけ削れます。ただしお客さまの快適さと直結するため、下げすぎれば逆効果です。 |
| 待機電力のカット | 閉店時に主電源を落とす。積み重なれば意味はありますが、金額としては小さいのが正直なところです。 |
| 電力会社の乗り換え | プランによっては下がります。ただし近年は燃料費調整額の影響が大きく、乗り換えただけで大幅に下がる状況ではなくなっています。 |
これらをすべてやったうえで、それでも電気代が月3万円を超えている。 そういう店舗が多いはずです。 設備を減らすことも、営業時間を短くすることもできない以上、 「使う量を減らす」という方向での改善は、どこかで頭打ちになります。
「使う量」ではなく「買う時間帯」を変えるという発想
ここから先は、考え方が変わります。 使う量を減らすのではなく、同じ量の電気を、安い時間帯に買うという方法です。
電気の単価は、契約プランによって時間帯で変わります。 夜間の単価が安く設定されたプランでは、昼と夜で1kWhあたりの金額に差が生まれます。 たとえば東京電力エリアの場合、従量電灯Bの第2段階が36.40円/kWhであるのに対し、 スマートライフS/Lの夜間(1時〜6時)は27.86円/kWh。 1kWhあたり8.54円の差です(2026年5月時点)。
この差そのものは、プランを切り替えるだけでは活かせません。 美容室が電気を使うのは昼間だからです。 夜が安くても、その時間に営業していなければ意味がない。
そこで出てくるのが蓄電池です。 単価の安い深夜のうちに電気を蓄えておき、単価の高い営業時間中にその電気を使う。 使う量は変わりませんが、買う単価が変わります。
太陽光パネルは必要ありません。
蓄電池というと「太陽光とセットでなければ意味がない」と思われがちですが、 それは太陽光で発電した電気を貯める使い方の話です。 ここで説明しているのは電力会社から安い時間帯に買って貯める使い方なので、 屋根も日当たりも関係ありません。テナントに入っているサロンでも導入できます。
蓄電池が向くサロン、向かないサロン
ここは正直に書きます。すべての美容室におすすめできるものではありません。 削減できる金額は、もともと払っている電気代に比例するためです。
向いているのは、こういう店舗
- 電灯契約の電気代が月3万円を超えている(これが最大の判断基準です)
- シャンプー台の給湯が電気(ガス給湯の場合、削減できる範囲はその分狭くなります)
- 席数が多く、営業時間が長い
- 夜まで営業している(夜間の安い電気を直接使える時間が増えます)
- 施術中の停電を避けたい(カラー剤の塗布中やパーマの途中で止まると、お客さまに実害が出ます)
向いていないのは、こういう店舗
- 電気代が月1万円前後。1〜2席の小規模サロンでは、削減額そのものに上限があります
- 給湯も空調もガス。電気を使っているのが照明とドライヤーだけなら、削れる余地は限られます
- 電力プランを変えたくない。時間帯別プランへの切り替えが前提の仕組みです
- 近く移転や改装の予定がある。設置と撤去の費用が二重にかかります
先に確認すべきこと:「動力」の電気は対象外です
事業所の電気には、照明やコンセントに使う「電灯」(単相)と、 業務用の機械を動かす「動力」(三相200V・低圧電力)の2種類があります。 この仕組みで削減できるのは電灯の分だけです。 大型の空調を動力で引いているサロンでは、その分は対象外になります。 検針票が2枚に分かれている場合は、まず内訳をご確認ください。
まとめ:まず、自店の内訳を知ることから
美容室の電気代が高いのは、給湯・空調・ドライヤー・照明という 止めようのないものに電気を使っているからです。 節電の工夫には意味がありますが、どこかで限界がきます。
そこから先は、使う量ではなく買う時間帯を変えるという方向になります。 ただしこれは、もともとの電気代が大きい店舗ほど効く仕組みです。 月1万円前後の店舗では、設備の費用に見合いません。
判断の出発点は、自店の検針票を見ることです。 契約が電灯だけなのか動力も含むのか、電気代のうち給湯がどれくらいを占めているのか。 そこがはっきりすれば、蓄電池を入れるべきかどうかも自然と見えてきます。