民泊の光熱費はいくら?ゲストが使う電気をどう抑えるか
公開:2026年9月12日
民泊を始めるとき、光熱費はあまり真剣に計算されません。 代行手数料や清掃費のほうが金額として大きいからです。 ところが運営を続けていくと、季節によって光熱費が3倍以上に振れることに気づきます。
この記事では、当社が実際に運営している一棟貸し施設の収支をもとに、 民泊の光熱費が売上のどれくらいを占め、どの季節にどう動くのかを書きます。 そのうえで、ゲストが使う電気をどこまで抑えられるのか、 抑えようがない部分にどう向き合うのかを整理します。
実際の数字:水道光熱費は売上の約3%
当社が運営している一棟貸しの宿泊施設で、1年分の収支を見直しました。結論から書きます。
- 水道光熱費は、売上に対しておよそ3%
- 金額では月1.6万円台から5.1万円台まで。月によって3倍以上の開きがある
- ピークは冬季。暖房と給湯が同時に効いてくる
- 経費の主役は別にある。運営代行手数料(売上の18%前後)と清掃費(同15%前後)
この数字を見て、「3%なら小さい」と感じるでしょうか。 たしかに、代行手数料と清掃費を合わせた33%と比べれば小さな項目です。
ただし、この2つは自分では下げられません。 代行手数料は契約で決まっていますし、清掃費を削れば清掃品質が落ち、そのままレビューに跳ね返ります。 一方で光熱費は、相手のいない経費です。 設備と契約プランを見直せば、自分の判断だけで動かせます。
なぜ冬に跳ね上がるのか
民泊の光熱費が冬にピークを迎える理由は、2つが重なるからです。
1. 暖房は、冷房より電気を使う
同じエアコンでも、暖房運転のほうが消費電力は大きくなります。 外気温と設定温度の差が、夏より冬のほうが大きいためです。 外が5℃で室内を22℃にするには17℃分を動かす必要がありますが、 夏に35℃を26℃にするのは9℃分です。
さらに、ゲストは在室中ずっと暖房を点けます。 自宅なら「使っていない部屋は消す」という判断が働きますが、宿泊先ではそうなりません。 一棟貸しであれば、リビングも寝室も同時に暖まっていることになります。
2. 給湯の負担が増える
冬は水道水の温度そのものが下がります。 夏なら20℃前後の水を40℃にすればよいところ、冬は5℃前後から温める必要がある。 同じ量のお湯をつくるのに、倍近いエネルギーがかかります。
加えて、ゲストは冬のほうが長くお湯を使います。 シャワーの時間も、湯船に張る回数も増えます。 電気温水器やエコキュートの施設では、ここが冬の電気代を押し上げる最大の要因になります。
寒冷地では、空室でも電気を止められません。
水道管の凍結を防ぐため、最低限の暖房や凍結防止ヒーターを動かし続ける必要があります。
ゲストがいない日にも電気代が発生するのは、この理由です。
稼働率が低い月ほど、売上に対する光熱費の比率は上がります。
ゲストが使う電気は、どこまで抑えられるのか
「ゲストに節電をお願いする」という発想は、民泊においては筋が悪い方法です。 快適さを買いに来ている人に我慢を求めることになり、レビューで返ってきます。 現実的にできるのは、ゲストの体験を損なわずに効率を上げることだけです。
| 断熱の改善 | 窓に内窓を足す、隙間を塞ぐ。効果は最も大きい部類ですが、工事費がかかります。長く運営する物件であれば検討の価値があります。 |
|---|---|
| エアコンの更新 | 10年以上前の機種は効率が明確に劣ります。ただし買い替えの費用を光熱費の差額で回収するには時間がかかります。故障のタイミングで更新するのが現実的です。 |
| 照明のLED化 | 済んでいなければ効果はありますが、金額としては大きくありません。民泊の電気代は空調と給湯が主役です。 |
| 給湯温度の設定 | 必要以上に高くしていれば下げられます。ただしゲストが「お湯がぬるい」と感じればレビューに書かれます。下げすぎは禁物です。 |
| 清掃時の運用 | 清掃後に空調を切る、チェックイン直前に入れる。代行清掃の場合は徹底が難しいのが実情です。 |
これらをやっても、ゲストが使う量そのものは減りません。 快適に過ごしてもらうことが商品である以上、ここは削れない前提として受け入れるしかありません。
「使う量」ではなく「買う時間帯」を変える
そこで、別の角度からの方法があります。 同じ量の電気を、安い時間帯に買っておくという考え方です。
電気の単価は、契約プランによって時間帯で変わります。 たとえば東京電力エリアでは、従量電灯Bの第2段階が36.40円/kWhなのに対し、 スマートライフS/Lの夜間(1時〜6時)は27.86円/kWh。 1kWhあたり8.54円の差があります(2026年5月時点)。
この差を活かすには、安い時間帯に電気を蓄えておく設備が要ります。それが蓄電池です。 深夜のうちに充電し、ゲストが滞在している日中から夜にかけてその電気を使う。 ゲストの使い方は何も変えずに、買う単価だけを下げることになります。
太陽光パネルは必要ありません。
蓄電池は太陽光とセットというイメージがありますが、それは発電した電気を貯める使い方の話です。 ここで書いているのは電力会社から安い時間帯に買って貯める使い方なので、 屋根の向きも日当たりも関係ありません。賃貸物件でも、オーナーさまの許可があれば設置できます。
停電は、光熱費より大きな損失になる
もう一つ、民泊には固有の事情があります。滞在中の停電です。
暖房が止まる、お湯が出ない、Wi-Fiが切れる、照明が点かない。 ゲストにとっては「泊まれない」のと同じです。 返金や代替宿の手配が必要になることもありますし、 その体験はレビューとして残り続けます。
山間部や海沿いの物件、台風や大雪の多い地域では、これは想定しておくべきリスクです。 逆に、停電しても普段どおり過ごせた宿は、そのことがレビューに書かれます。 蓄電池を入れる理由として、光熱費の削減より こちらのほうが決め手になる施設は少なくありません。
効果が出る施設、出ない施設
正直に書きます。すべての民泊におすすめできるものではありません。
向いている施設
- 1棟あたりの電気代が月3万円を超えている(複数棟をお持ちでも、合算ではなく1棟ずつで判断してください)
- オール電化。給湯・暖房・調理のすべてが電気
- 寒冷地にあり、冬季も稼働している
- 台風・大雪で停電しやすい立地
- グランピングや貸別荘など、電源の確保が体験価値に直結する
向いていない施設
- 1棟あたりの電気代が小さい。当社の運営物件でも、閑散期は月1.6万円ほどでした。この水準では設備の費用に見合いません
- 給湯も暖房もガス。電気で削減できる余地が限られます
- 電力プランを変えたくない。時間帯別プランへの切り替えが前提の仕組みです
- 短期で撤退する可能性がある。設置と撤去の費用が二重にかかります
まとめ:光熱費は「自分で下げられる数少ない経費」
民泊の経費のうち、代行手数料と清掃費は簡単には動かせません。 稼働率も単価も、市場と競合次第です。 そのなかで光熱費は、自分の判断だけで動かせる数少ない項目です。
ただし、その効果はもともとの金額に比例します。 月1.6万円の施設と月5万円の施設では、取り組む意味がまったく違う。 まずは1棟ずつ、12か月分の電気代を並べてみることをおすすめします。 冬にどれだけ跳ねているかを見れば、手を打つべき施設かどうかがはっきりします。