飲食店の電気代を下げる方法|止められない冷蔵設備と空調
公開:2026年9月14日
飲食店の電気代は、節電を頑張っても思ったほど下がりません。 照明をこまめに消しても、エアコンの設定温度を1度変えても、請求額はほとんど動かない。 理由ははっきりしていて、電気代の大部分が「止められない設備」から出ているからです。
この記事では、飲食店の電気代が何に使われているのかを分けて整理し、 そのうえで自力で下げられる部分と、構造的に下げられない部分を切り分けます。 最後に、蓄電池という選択肢が合う店と合わない店についても書きます。
飲食店の電気代は、何に使われているのか
業態や店の規模で順位は入れ替わりますが、飲食店で電気を使っているものは大きく次の4つです。
① 冷蔵・冷凍・製氷
業務用冷蔵庫、冷凍ストッカー、製氷機、ショーケース。営業時間に関係なく、24時間365日動き続けます。扉を開けるたびに庫内の温度が上がり、戻すために電気を使います。
② 空調
客席を快適に保つための空調に加え、厨房の熱を逃がす換気扇が回るぶん、冷やした空気も一緒に外へ出ていきます。夏場は特に負担が大きくなります。
③ 厨房機器
電子レンジ、食洗機、炊飯器、電気フライヤー、保温庫。ガス中心の厨房でも、これらは電気です。仕込みとピーク時間に集中して使うのが特徴です。
④ 照明・レジ・その他
照明、POSレジ、券売機、Wi-Fi、防犯カメラ、看板。1つずつは小さくても、営業時間中ずっと点いているので積み上がります。
「止められない設備」という構造的な問題
事務所であれば、帰るときに電気を消せば電気代はほぼ止まります。 飲食店はそうはいきません。店を閉めても冷蔵・冷凍設備は止められないからです。
そのうえ、節電の余地が大きいはずの空調も、客席の快適さに直結するため削りにくい。 結果として、「使う量を減らす」工夫で動かせる範囲は、思っているより狭いのが実情です。
冷蔵設備の消費電力は、機種と使い方で大きく変わります。
同じ容量の業務用冷蔵庫でも、年式が古いもの、扉のパッキンが劣化しているもの、
背面の放熱スペースが塞がっているものは、明らかに電気を食います。
自店の機器の目安は、本体に貼られた銘板(定格消費電力の記載)で確認できます。
今日からできる対策と、その限界
まず、お金をかけずにできる対策です。どれも効果はありますが、限界もあります。
| 冷蔵庫の放熱スペース | 背面や側面が壁や段ボールで塞がっていると、効率が落ちます。最もお金がかからず、効果が見込める対策です。 |
|---|---|
| 扉の開閉とパッキン | 開けている時間を短くする、傷んだパッキンを交換する。地味ですが、24時間動く機器なので積み重なります。 |
| 空調フィルターの清掃 | 厨房の油煙でフィルターが目詰まりしやすいのが飲食店です。家庭より清掃の頻度を上げる必要があります。 |
| 照明のLED化 | まだ蛍光灯が残っていれば効きます。すでにLEDなら、ここに削る余地はありません。 |
| 古い冷蔵設備の更新 | 効率は明確に上がりますが、買い替えの費用を電気代の差で回収するには時間がかかります。故障や入れ替えの時期に合わせるのが現実的です。 |
停電したときの損失は、電気代より大きい
飲食店にとって、電気代と同じくらい見落とされがちなのが停電のリスクです。
- 在庫が一度に傷む。冷蔵・冷凍の食材は、停電が数時間続けば廃棄の判断を迫られます
- 営業中なら、その日の売上が消える。レジも照明も空調も止まれば、客席を回せません
- 予約が飛ぶ。コース料理や宴会の予約が入っている日なら、損失はさらに大きくなります
台風や落雷による停電は、数時間で復旧することもあれば、長引くこともあります。 「一度でも起きたら、いくら失うか」を一度計算しておくと、備えにかける費用の考え方が変わります。
「使う量」ではなく「買う時間帯」を変える
使う量を減らす工夫が頭打ちになったら、別の方向があります。 同じ量の電気を、単価の安い時間帯に買っておくという考え方です。
電気の単価は、契約するプランによって時間帯で変わります。 たとえば東京電力エリアでは、従量電灯Bの第2段階が36.40円/kWh、 スマートライフS/Lの夜間(1時〜6時)は27.86円/kWh。 1kWhあたり8.54円の差があります(2026年5月時点)。
この差を活かすのが蓄電池です。 深夜のうちに安い電気を蓄えておき、営業時間中にその電気を使う。 冷蔵設備も空調も、使い方は何も変えずに、買う単価だけを下げることになります。 停電したときには、蓄えた電気で冷蔵設備を動かし続けることもできます。
太陽光パネルは必要ありません。
ここで書いているのは、電力会社から安い時間帯に買った電気を貯める使い方です。 屋根も日当たりも使わないので、テナントに入っている店舗でも、オーナーさまの許可があれば設置できます。
先に確認すべきこと:「動力」の電気は対象外
事業所の電気には、照明やコンセントに使う「電灯」(単相)と、 業務用の機械を動かす「動力」(三相200V・低圧電力)の2種類があります。 蓄電池で削減できるのは電灯の分だけです。
飲食店では、大型の業務用冷蔵庫や業務用エアコンを動力で引いていることが珍しくありません。 その場合、電気代の総額が大きくても、削減できる範囲は限られます。 検針票が「電灯」と「動力」の2枚に分かれていたら、まずそれぞれの金額を確認してください。
蓄電池が合う店、合わない店
合う可能性が高い店
- 電灯契約の電気代が月3万円を超えている
- 冷蔵・冷凍設備の多くが電灯(単相)で動いている
- 夜まで営業している(安い時間帯の電気を使える時間が長くなります)
- 在庫金額が大きい、予約で成り立っているなど、停電の損失が大きい
合わない可能性が高い店
- 電気代の大半が動力。削減できるのは電灯の分だけです
- 電灯の電気代が月1万円前後。削減できる金額そのものに上限があります
- 電力プランを変えたくない。時間帯別プランへの切り替えが前提の仕組みです
- 近く移転や閉店の予定がある。設置と撤去の費用が二重にかかります
まとめ:検針票を2枚並べるところから
飲食店の電気代が下がりにくいのは、冷蔵設備と空調という止められない電気が中心だからです。 放熱スペースの確保やフィルター清掃など、お金をかけずにできることは確実にやる価値があります。 ただし、それだけで大きく動くことはあまりありません。
その先を考えるなら、まず確認すべきは電灯と動力の内訳です。 電灯の分が大きければ、買う時間帯を変える方法が効いてきます。 動力が大半なら、別の手を考えるほうが合理的です。 どちらなのかは、検針票を2枚並べれば、その場で分かります。