旅館・ホテルの電気代|客室稼働と光熱費の関係
公開:2026年9月14日
旅館やホテルの光熱費には、やっかいな性質があります。 お客さまが減っても、思ったほど下がらないことです。 客室が半分空いていても、ロビーの空調も、厨房の冷蔵庫も、大浴場の保温も止まりません。
この記事では、宿泊施設の光熱費の構造を「稼働率に連動する費用」と「連動しない費用」に分けて整理します。 そのうえで、低圧契約の小規模な宿でできることと、停電時のお客さま対応についても書きます。
この記事の前提
客室数の多いホテルや大型旅館の多くは、契約電力50kW以上の高圧契約です。
高圧契約の施設は、ここで扱う蓄電池の対象外になります。
この記事は、低圧契約の小規模な旅館・ペンション・ゲストハウスを主に想定しています。
一棟貸しの民泊については、民泊の光熱費の記事で実データをもとに書いています。
宿泊施設の光熱費は、2種類に分かれる
| 種類 | 中身 | 稼働率が下がると |
|---|---|---|
| 稼働率に連動する費用 | 客室の空調、客室の照明、シャワー・給湯、客室の冷蔵庫、洗濯・リネン | ある程度は下がる |
| 稼働率に連動しない費用 | ロビー・廊下の照明と空調、厨房の冷蔵・冷凍設備、大浴場の保温・循環、フロント・予約システム、非常灯 | ほとんど下がらない |
閑散期に売上が落ちても光熱費が同じように落ちないのは、この「連動しない費用」があるからです。 稼働率が低い月ほど、売上に占める光熱費の比率は上がります。
給湯と空調が大きな割合を占める理由
宿泊施設で特に大きいのは、給湯と空調です。
- 給湯:客室のシャワー、大浴場、厨房の洗い物。冬は水温が下がるぶん、同じ量のお湯をつくるのに多くのエネルギーが要ります
- 空調:お客さまは在室中ずっと空調を使います。自宅と違って「使っていない部屋を消す」という判断が働きません
ただし、大浴場のボイラーはガスや重油という施設も多く、その場合は給湯の費用は電気代ではなく燃料費に出ています。 自施設の給湯が何でまかなわれているかで、電気代の中身は大きく変わります。
「動力」の電気は対象外です。
旅館では、浴場の循環ポンプ、業務用エアコン、厨房の大型冷蔵設備などが
動力(三相200V・低圧電力)で引かれていることがあります。
蓄電池で削減できるのは電灯(単相)の分だけです。検針票で電灯と動力の内訳を確認してください。
低圧契約の小規模な宿でできること
まず運用で見直せること
- 空室の空調と照明:チェックアウト後、清掃が終わった客室の空調を確実に切る
- 共用部の照明:お客さまの少ない時間帯の廊下やロビーを、安全を損なわない範囲で減灯する
- 閑散期の客室の使い方:予約を特定のフロアや棟に寄せ、使わないエリアの空調を止める
- 給湯の温度設定:必要以上に高くしていないか。ただし下げすぎはお客さまの不満に直結します
買う時間帯を変えるという方法
運用の見直しで下げ切ったあとは、同じ量の電気を安い時間帯に買う方向があります。 東京電力エリアの例では、従量電灯Bの第2段階が36.40円/kWh、スマートライフS/Lの夜間(1時〜6時)が27.86円/kWhで、 1kWhあたり8.54円の差があります(2026年5月時点)。
蓄電池に深夜の安い電気を蓄えておき、チェックイン後の夕方から夜、朝の給湯や空調の時間帯に使う。 お客さまの過ごし方は何も変えずに、買う単価だけを下げることになります。太陽光パネルは必要ありません。
停電したとき、宿泊客をどう守るか
宿泊施設の停電は、お客さまがそこで夜を過ごしているという点で、店舗の停電とは重みが違います。
- 客室の照明と空調が止まり、真夏や真冬は体調に関わる
- お湯が出ず、入浴できない
- Wi-Fiが止まり、お客さまが情報を得られない、連絡が取れない
- フロントの予約・会計システムが使えない
すべてを動かし続けるのは現実的ではありません。 「停電時にこれだけは守る」という範囲を決めておくことが備えの出発点です。 たとえば、共用部の照明、Wi-Fi、スマホの充電場所、フロントの端末。 この範囲が決まれば、必要な容量も、蓄電池で足りるかどうかも判断できます。
山間部や海沿いの宿では、台風や大雪による停電は想定しておくべきリスクです。 停電の夜にも明かりがついていた宿は、そのことがお客さまの記憶とレビューに残ります。
まとめ
旅館・ホテルの光熱費が稼働率ほど下がらないのは、共用部や厨房、浴場といった稼働率に連動しない費用があるからです。 まずは空室や共用部の運用を見直し、下げられる部分を下げ切ることが先です。
そのうえで確認すべきは3つ。契約が低圧か高圧か、給湯が電気か燃料か、電灯と動力の内訳。 低圧契約で、電灯の電気代が大きい小規模な宿であれば、買う時間帯を変える方法と停電への備えを、同時に検討する価値があります。