事業所のBCPと非常用電源|営業を止めないために
公開:2026年9月20日

BCP(事業継続計画)というと、大企業が作るものという印象があるかもしれません。 しかし停電で営業が止まって困るのは、むしろ小さな店舗や事業所です。 一日の売上を失い、冷蔵在庫が傷み、予約のお客さまに連絡を回す。その負担を吸収する余力が小さいからです。
この記事でわかること
- 停電による営業停止の損失
- 止められない設備の洗い出し
- 必要な電力と時間
- 非常用電源の選択肢比較
- 蓄電池で賄える範囲
読むのにかかる時間:約4分 / 出典は記事の末尾に記載しています
読む前に、向き不向きだけ先に確かめることもできます。 電気代の削減効果は、もともとの電気代の大きさで決まります。合わない場合は、その旨をはっきり表示します。
この記事では、小規模な店舗・事業所が停電に備えて何を決めておけばいいかを、非常用電源の選び方まで含めて整理します。
ステップ1:停電による営業停止の損失を見積もる
最初に、停電で何を失うのかを金額でおおまかにつかみます。
| 損失の種類 | 見積もり方 |
|---|---|
| 売上の損失 | 1時間あたりの平均売上 × 停電で営業できない時間 |
| 在庫の損失 | 冷蔵・冷凍の在庫金額のうち、廃棄になりうる分 |
| 予約・信用の損失 | その日の予約件数、振替や返金の手間、口コミへの影響 |
| 復旧の費用 | データの復旧、機器の再設定、臨時の人件費 |
この合計が大きい事業ほど、備えに費用をかける理由が強くなります。 逆に小さいなら、高額な設備より、運用のルールを決めるほうが先です。
ステップ2:止められない設備を洗い出す
次に、停電したときに「これが止まると営業が成り立たない」という設備を書き出します。
お金と情報
レジ・POS、キャッシュレス決済端末、予約システム、電子カルテ、サーバー、Wi-Fi、電話
商品と安全
冷蔵・冷凍設備、ショーケース、医療用の保管庫、照明、防犯設備、自動ドア
書き出したら、それぞれに「すぐ止まると困る」「数時間なら我慢できる」「止まってもいい」の優先順位を付けます。
ステップ3:必要な電力と時間を見積もる
優先度の高い設備について、消費電力(W)と、何時間動かしたいかを確認します。
- 消費電力は、機器の銘板や取扱説明書で確認できる
- 「1回の停電で何時間しのげれば、営業や在庫を守れるか」を決める
- その機器が「電灯(単相)」と「動力(三相200V)」のどちらで動いているかを確認する。業務用エアコンや大型の冷蔵設備は動力のことが多い
動力の機器は、一般的な蓄電池では守れません。
停電時に守りたい機器が動力で動いている場合、蓄電池ではなく、三相出力に対応した発電機などを検討する必要があります。
検針票が「電灯」と「動力」の2枚に分かれている事業所は、まずどの機器がどちらなのかを整理してください。
ステップ4:非常用電源の選択肢を比べる
| 手段 | 向いている事業所 | 注意点 |
|---|---|---|
| UPS 無停電電源装置 |
サーバー・レジ・電子カルテなど、瞬断も許されない機器がある | 持続時間は短く、安全に終了するまでの時間稼ぎ |
| ポータブル電源 | 停電時に決済端末・照明・通信だけ守れればいい小規模店 | 容量と出力に限りがある。差し替えの手間 |
| 発電機 | 長時間の停電に備えたい、屋外に置き場所がある | 屋外限定、騒音、燃料の保管と点検。精密機器にはインバーター式を |
| 定置型蓄電池 | 電灯の設備が中心で、停電時に自動で切り替えたい。普段の電気代も下げたい | 動力は対象外(電灯と別々の契約なら電灯の分で導入可)。工事とスペースが必要。太陽光なしなら容量を使い切ったら終わり |
ステップ5:蓄電池で賄える範囲を確認する
定置型の蓄電池が選択肢に入る場合は、次の点を確認します。
- 停電時に守りたい機器が電灯の回路にあるか
- それらを同時に動かしたときの合計の消費電力が、蓄電池の出力に収まるか
- 守りたい時間分の容量があるか
- 全負荷型か、守りたい回路を選んだ特定負荷型か
- サーバーなど瞬断が問題になる機器には、UPSを併用するか
あわせて、平常時の使い方も考えます。 市場連動型の電気に切り替えられ、電灯の電気代がある程度大きい事業所なら、普段は電気代の削減、停電時は非常用電源という二つの役割を持たせられます。
設備と同じくらい大事な「運用のルール」
- 停電したら最初にやること:安全確認、冷蔵設備の扉を開けない、レジの状態の確認
- 営業を続けるか閉めるかの判断基準:何時間を超えたら閉めるか
- お客さまへの連絡方法:予約客への連絡手段、SNSでの告知
- 在庫の廃棄基準:停電が何時間続いたら、どの食材や薬剤を廃棄するか
- 年に1回の確認:非常用電源が動くか、手順を全員が知っているか
高価な設備を入れても、誰がどう使うかが決まっていなければ、停電時に役に立ちません。 逆に、ルールが決まっているだけで、損失を小さくできる場面も多くあります。
まとめ
- 順番は損失を見積もる → 止められない設備を洗い出す → 必要な電力と時間を決める → 手段を比べる → ルールを決める
- 最初に確認すべきは守りたい機器が電灯か動力か
- 電灯中心なら蓄電池、動力中心なら発電機、瞬断が許されない機器にはUPS
非常用電源を選ぶときに、最初に確認すべきは守りたい機器が電灯か動力かです。 電灯の機器が中心なら蓄電池、動力の機器が中心なら発電機、瞬断が許されない機器にはUPS。 この整理ができれば、自分の事業所に合った備えが見えてきます。